コーヒーを飲むと、ほっとするのはなぜ?|わたしの一杯、むかしの一杯②
楽しみ方
2026.10.22

みなさんにとって、コーヒーは「シャキッとする飲み物」ですか?
それとも「ほっとする飲み物」ですか?
コーヒーの日のアンケートでいただいた思い出と、昔のコーヒーのお話を並べる連載の2回目。
前回は、一杯の価値のひとつめとして「ある一杯が、わたしの一杯になる」というお話をしました。
今回は、ほっとする一杯のお話です。
【目次】
- 思い出ランキング第3位、「ほっとする一杯」
- 17世紀のイギリス、酒場ではなくコーヒーハウスで
- 「純喫茶」の「純」って何のこと?
- おわりに
思い出ランキング第3位、「ほっとする一杯」
1,014名の方の思い出を、出てくる言葉をもとに数えたランキング。

今回は、第3位の「ほっとするひととき」です。
「ほっとする」「落ち着く」「癒される」。
そんな言葉で思い出を書いてくださった方がたくさんいらっしゃいました。
「最近は夜勤明けで店舗に立ち寄り飲むのが楽しみとなっており、コーヒーを飲むと「仕事が終わった」とホッとできる一杯になっています。」
(まいる さん/大吉ブレンドを選んだ40代の方)
夜勤、おつかれさまです。
ひと息つく一杯に選んでいただけてうれしいです。
「なんか急に落ち込んでしまい、おうちで悶々としていた時に、ネーミングが今の自分にあってると思い、巣篭もりブレンドを入れて飲んでみました。香りと味に癒されてほっとひと息つくことができました。カップの底が見える頃には、明日も頑張る気持ちが湧いてきました。」
(みーまろここあ さん/巣ごもりブレンドを選んだ60代の方)
ほっとして、それから、また頑張れる。
そんな経験を通してコーヒーを好きになった方は多いのではないでしょうか。
コーヒーでほっとするのは、味わいだけのおかげでしょうか。
昔、コーヒーを出していたお店をのぞいてみると、そのヒントがありそうです。
17世紀のイギリス、酒場ではなくコーヒーハウスで
1650年代のはじめ、オックスフォードとロンドンに、コーヒーハウス(コーヒーを出すお店)が開かれました。
それまで、人が集まって話す場所といえば、お酒を出すにぎやかな酒場でした。
新しくできたコーヒーハウスは、お酒の代わりにコーヒーを片手に、政治の話から世間話まで客同士が語り合う社交の場として栄えていきました。

17世紀ロンドンのコーヒーハウス
※ソース:(Wikimedia Commons)パブリックドメイン
1674年に出回った「コーヒーハウスの心得」という刷り物には、身分の高い人がやってきても、席をゆずらなくてよい、と書かれています。
また、1ペニーほどのわずかなお金で新聞を読み、居合わせた人と話ができたことから、「ペニー大学」とも呼ばれました。
身分の差が大きかった時代に、立場を問わず気軽に加われる場所だったのです。
通ううちに、顔なじみもできていったのでしょう。
コーヒーハウスは、人との出会いや語らいを気軽に楽しめる場所だったようです。
「純喫茶」の「純」って何のこと?
街の喫茶店の看板で見かける「”純”喫茶」。
純喫茶を調べると、Wikipediaには「酒類のメニューを扱っていない喫茶店」とありました。
喫茶店との違いはなんでしょう?
イギリスでコーヒーハウスが開かれた約200年後。
日本では明治の終わりごろから「カフェー」と呼ばれるお店が増え、大正の末には全国に広がりました。
なかにはお酒を出したり、店員がお客の席について接客したりする、バーに近いお店も多くあったそうです。
昭和のはじめにはそうしたお店を取り締まる決まりもつくられ、お酒も接客もない、コーヒーを味わうためのお店が「純喫茶」と名乗り、区別するようになったのです。
コーヒーを前に、ひとりで本を開いてもいいし、誰かとゆっくり話してもいい。
喫茶店に入ると、なんとなく気持ちが落ち着く。
その感覚は、こうした過ごし方が長く続いてきたことと、どこかでつながっているのかもしれません。
おわりに
猿田彦珈琲は、「誠実に、誰かのために」というホスピタリティを大切にしています。
目の前のお客様がどんな気持ちでお店に来てくださったのかに目を配り、ほんの数秒のやりとりでも、誠実に向き合いたいと思っています。

カウンター越しにお客様と話すバリスタ
思い出のなかには、こんな一文もありました。
「会社の下にお店が入って、残業を頑張った次の朝、必ずご褒美でコーヒーを買って出勤してます。朝の「いってらっしゃいませ」が癒しでもあり活力でもあり。」
(さっと さん/猿田彦フレンチを選んだ60代の方)
コーヒーハウスや喫茶店で、人が言葉を交わしながらコーヒーを楽しんできたように。
みなさんの声から見えてきたのも、味わいだけではない、一杯の価値でした。
だれかの存在が、心をほどく
誰かと話す時間も、ひとりで過ごす時間も。
お店で味わう一杯がそのどちらにも寄り添えていたら嬉しいです。
次回は、第4位の「一日のはじまりに」と第7位の「仕事や家事の合間に」。
毎日のコーヒー時間のお話です。
text:奥村一誠(猿田彦珈琲)



